主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
【背景】微小管重合阻害薬 combretastatin A4 disodium phosphate (CA4DP) は新規抗がん剤として期待されているものの、血圧上昇及び虚血が原因と考えられる心筋障害の改善が喫緊の課題として求められている。一方、phosphodiesterase 5 (PDE 5) 阻害薬は心臓を含む全身の血管平滑筋を拡張させることから、CA4DP誘発性の心筋障害を抑制する可能性が想定される。そこで、 PDE 5 阻害薬の前処置が CA4DP誘発性心筋障害に及ぼす改善効果について検討した。
【方法】6 週齢の雄性SD系ラットにtadalafil 5 mg/kg を経口投与した 2 時間後にCA4DP 120 mg/kg を静脈内投与した。陰性対照群にはそれぞれ溶媒を投与した。血圧は各薬剤投与前と投与 30 分後に tail-cuff 法により測定した。また、投与 3 日後に心エコー検査を実施し、安楽死処置後に心臓を採材して病理組織学的検査に供した。
【結果】CA4DP による血圧の上昇が tadalafil の前投与により抑制された。心エコー検査の結果、CA4DPは左室拡張末期径や左室拡張末期容積を有意に減少させたため心拍出量が有意に減少した。Tadalafil にはこれらの変化を抑制させる効果が認められた。病理組織学的検査において、CA4DP投与により心筋細胞の壊死ならびに炎症性細胞浸潤が認められたが、tadalafil 前投与群では軽微な傾向にあった。
【考察】CA4DPにより誘発される血圧の上昇や心室拡張機能の低下が tadalafil の前処置により改善することが明らかとなった。今後、微小管重合阻害薬とPDE 5 阻害薬の併用による抗腫瘍効果への影響や投与時期を詳細に検証することにより、心毒性リスクを低減したがん化学療法の確立に繋がる可能性が示唆された。