主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
薬物誘発性QT延長症候群は男性よりも女性で発症率が高いことが知られているが、メカニズムは不明である。当分野では、主な分子標的である遅延整流性カリウム(IKr)チャネルのhERG分子にエストラジオールが相互作用し、hERG阻害薬E-4031の阻害活性を増強することを見出した。加えて、hERG変異体を用いた実験などからエストロゲン類と阻害薬が共に結合する可能性を示してきた。今回、他のhERG阻害薬(20剤)についてもエストロゲン類の影響がみられるかどうかを調べるため、オートパッチクランプ装置SyncroPatch384PE(ナニオン)を用いて検討した。その結果、各種エストロゲン類の添加によりhERG阻害活性に影響する7化合物が同定された。QT延長症候群が女性で多く発症することが原因で市場撤退した2剤も含まれており、エストロゲン類との相互作用がリスクを高めた可能性が示唆された。本研究結果は、薬物誘発性不整脈を忌避する非臨床安全性試験において、エストロゲン類の影響について議論する必要性を示唆している。