日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-49E
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腹膜透析に起因する腹膜劣化を促進する新規因子の探索
*三原 大輝堀 正敏
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抄録

背景

腎不全では体液中の電解質バランス調整や老廃物濾過が正常に行われず、心不全や尿毒症など致死的な二次疾患に繋がる。根治法は腎移植のみだが、一般的には人工透析による対症療法が選択される。国内の400人に1人が透析を行っており、透析の社会的重要性は年々増加している。

人工透析には血液透析と腹膜透析がある。血液透析は時間的制約から生活の質を著しく低下させる。一方、腹膜透析は自宅で行える上に拘束時間が少なく、生活の質を維持しやすい。しかし国内で腹膜透析を選択する割合は3%と非常に少ない。これは長期間の腹膜透析により、腹膜劣化やそれに続発する被膿性腹膜硬化症などを発症するリスクが不可避なことによる。

透析液の改良は続けられているが、未だに腹膜劣化を効果的に抑制する透析液はない。そこで本研究は腹膜劣化を促進する新規因子を特定し、透析液の改良、さらには腹膜透析の普及の一助とすることを目的とした。

方法・結果

メチルグリオキサールを混和させた透析液を3週間マウスに腹腔内投与することで、腹膜劣化モデルを作製した。腹膜劣化は主な病変であるコラーゲン沈着により評価した。隔週で評価した結果、腹膜中コラーゲン量は単調増加した。

次に病態促進を担う細胞として腹腔細胞に着目し、様々な線維化促進因子のmRNA発現を定量した。その結果Factor XのmRNA発現が病態進行と共に増加した。さらに腹腔洗浄液中のFactor Xのタンパク量を定量したところ、病態進行と共に増加した。

最後に腹膜劣化モデル作製時にFactor Xの中和抗体を透析液に混入させたところ、腹膜中コラーゲン量増加が抑制された。

結論

腹膜劣化と共にFactor Xが腹腔内においてタンパクレベルで顕著に増加し、Factor Xの中和抗体が腹膜劣化に対し予防的効果を示したことから、Factor Xが腹膜劣化を促進する一因子であることが考えられた。

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