日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-4E
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神経毒性に関するAdverse Outcome Pathway(AOP)に基づいた農薬類の複合影響評価
*平野 哲史池中 良徳星 信彦田渕 圭章
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抄録

【背景・目的】化学物質のリスク評価における課題の一つとして、個々の化学物質を対象とする従来の毒性評価システムによっては複数の化学物質による複合影響のリスクを評価できない点が挙げられる。近年提唱されたAdverse Outcome Pathway(AOP)の概念に基づくと、複合影響に対する効率的な毒性評価を行うためには毒性発現における共通のKey Eventを活用することが重要となる。我々は前回大会にて、ピレスロイド系農薬デルタメトリン曝露時において、マイトファジーの活性化およびプロテアソーム活性低下を介したタンパク質分解系の不均衡状態が関与する新たな神経毒性メカニズムを報告した。そこで本研究では、これらのエンドポイントを神経毒性のKey Eventとすることで農薬類の複合影響評価への応用を検証することを目的とした。

【方法】マウス神経芽細胞腫Neuro-2a細胞に農薬類10種を曝露し、ミトコンドリア膜電位やオートファジーおよびプロテアソーム活性を指標としてミトコンドリアやタンパク質分解系への機能的影響を評価した。またWST-8アッセイにより細胞生存性を評価し、CompuSynソフトウェアにより複合影響の用量反応性を解析した。

【結果・考察】ピレスロイド系農薬ペルメトリンおよびデルタメトリンとフェニルピラゾール系農薬フィプロニルの曝露により、ミトコンドリアの機能低下、オートファジーの分解基質マーカーであるp62の蓄積等の共通したKey Eventの変動がみられた。さらにこれらの複合曝露により、単独曝露時と比べてより低濃度で細胞生存性が低下し、Combination Index < 1を示す相乗効果が認められた。本研究により、神経毒性に関するAOPの共通Key Eventを指標とすることで異種の農薬類の複合曝露が引き起こす相乗的な神経毒性を検出できることが初めて示された。

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