日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-90S
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リードアクロスによる発達神経毒性評価手法の開発:分子記述子を用いた類似物質選択の有効性
*大村 奈央志津 怜太保坂 卓臣菅野 裕一朗吉成 浩一
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抄録

【目的】近年、インシリコ手法による化学物質の毒性予測・評価が進んでいるが、神経毒性・発達神経毒性など、毒性発現機序が複雑な毒性については、公的に利用可能な動物試験結果データベースがないことなどの理由から研究が遅れている。そこで、既存データを収集して発達神経毒性データベースを構築し、化学物質の物理化学的特徴量を表す分子記述子を用いた新たなリードアクロス手法の確立に向けた基礎的検討を行った。

【方法】既報の文献(Neurotoxicol Teratol 52: 25–35, 2015)に掲載されている361物質を、発達神経毒性が報告されている物質164物質と、関連報告がない197物質に分け、前者を発達神経毒性陽性、後者を陰性と定義した。分子記述子はalvaDesc(Alvascience)で計算し、標準化した。化学構造との関連性を判断しやすい記述子グループに含まれ、全物質で計算可能な記述子のち一定値であったものを除いた351記述子を基本セットとして利用した。物質間の相対的なユークリッド距離を算出し、近傍物質との毒性(陽性・陰性)を比較した。

【結果及び考察】リードアクロスに有用な記述子を検討した結果、P < 0.05で有意差が認められる記述子を利用した場合に総合的に良い評価精度が得られた。また、近似物質の定義に用いる物質間の相対距離の閾値を検討した結果、0.13〜0.15で良い評価精度が得られることが明らかになった。さらに、近傍物質数について検討した結果、11〜15程度で偽陰性と偽陽性がともに少ない総合的に良い評価精度が得られることが明らかとなった。以上の結果から、陽性/陰性で有意に値が異なる記述子セットを選択し、近傍物質の定義に利用する物質間距離に閾値を設け、また近傍物質数を制限することで、リードアクロス手法による発達神経毒性の評価精度が高くなることが示唆された。

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