日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-3
会議情報

シンポジウム17
AMED-MPSプロジェクトの成果と今後の展望
*奈良岡 準
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

製薬企業では、医薬品の研究開発生産性の低下、新規モダリティの臨床予測性向上、動物実験代替法の推進によるなど様々な課題を抱えており、そのような中、スライドガラスからマルチウェルプレートサイズで、マイクロ流路を持った培養デバイスで、ヒト由来iPS細胞や初代細胞など様々な臓器由来細胞を培養し、培地を循環させることで生体機能を模倣したMicrophysiological System(MPS)が、それらの課題解決に繋がる医薬品開発ツール(DDT)として期待されている。また化粧品開発を始めとする他業界においても次世代の評価系として、世界のライフサイエンス業界がその研究の動向に注目している。

本邦においてもMPS の社会実装を促進する目的で 2017 年度から5年間の「再生医療技術を応用した創薬支援基盤技術の開発事業(AMED-MPS事業)」が実施された。その内容としては、①チップ等のデバイス上で各種臓器細胞を立体培養・共培養する高度な技術を駆使し、これまで成し得なかった培養モデルを構築する。②その培養技術を産業化するためのデバイス作製技術を開発する。さらに、③構築されたMPS方法を検証し基準を設定する。④肝臓を対象とし、ヒトiPS細胞より分化誘導した臓器細胞と、その同一ドナーの臓器細胞の機能の相関性を明らかにすることで、医薬候補品の安全性や薬物動態等が評価可能な新規の創薬基盤技術の確立を目指してきた。当事業の体制の特徴として、製薬企業のニーズを事業全体に反映させるために、製薬企業の研究所長4名が参加し事業全体を監督するHQ制度や、4つの研究班および製薬企業とのハブとなる集中研究拠点がある。

今回、AMED-MPS事業の成果や今後に向けた課題を紹介するとともに、安全性評価のDDTとしてのMPSの今後の展望について紹介したい。

著者関連情報
© 2022 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top