日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S24-5
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シンポジウム24
環境外来物質と増殖因子の顔面形成異常への協奏的作用
*三品 裕司杨 静文
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抄録

顔面は発生初期に複数の突起がそれぞれ成長、融合することで形成される。我々は増殖因子がこの過程をどう制御しているかを明らかにし、先天性異常の原因を解明するために、逆遺伝学的手法を用いてモデルマウスを作出し、解析を続けてきた。その過程で骨形成因子 (Bone Morphogenetic Protein, BMP) シグナルの活性化により顔面裂 (midfacial cleft, MFC) が起きることを見出し、またこの系において、増殖因子のシグナルレベルが環境外来物質による奇形誘発のリスクファクターとなりうる知見を見出した。

神経堤細胞特異的にBMPタイプ1受容体の一つであるACVR1(ALK2)の活性型変異体を発現させたところ、BMPシグナルの上昇により、発生10.5日目から顔面中央が広がり、内側ならびに側方鼻突起の異常によるMFCを引き起こした。網羅的遺伝子発現解析により、変異マウスで Aryl hydrocarbon receptor (AHR) の発現が上昇していることが見出され、さらに、AHR の拮抗剤である alpha-naphthoflavone の投与により半数の変異個体で顔面異常が抑制された。また別のBMPタイプ1受容体BmPR1A(ALK3)の活性型変異体を発現させたところ、それ単独ではMFCは起きなかったが、低容量のbeta-naphthoflavone の投与により変異個体でのみ顔面異常が観察された。このことはAHRを介するシグナル活性がBMPシグナルの活性化により上昇しており、それが顔面裂の原因となっていることを示唆している。また、何らかの理由でBMPシグナルが上昇している胎児では環境外来物への感受性が上昇している可能性を示唆している。

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