日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S39-1
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シンポジウム39
マクロファージによるカーボンナノチューブ認識機構
*中山 勝文
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抄録

カーボンナノチューブ(carbon nanotubes: CNT)は、エネルギー、バイオ、ITといった多岐に渡る分野での用途が期待されているものの、その一方で一部の多層CNT(MWCNT)はアスベスト様の毒性を示すことが多くの動物実験で認められている。その懸念から2019年に国際化学物質事務局ChemSecはCNT全般をSubstitute It Now(SIN)リストに加え、今後の使用規制について大きく議論されている。そのためCNT産業のさらなる発展にはその毒性メカニズムを分子レベルで理解し、より安全なCNTの開発と同時にCNTによって起きうる疾患に対する予防・治療法の確立が求められる。CNTを含む多くのナノマテリアルは生体内でマクロファージなどの貪食細胞に取り込まれ、その細胞ストレス応答(NLRP3インフラマソームの活性化や細胞死など)が毒性発現に関与すると考えられている。しかしながらその詳細について多くのことが判っていない。私たちはナノマテリアルに対するマクロファージ炎症応答分子機構の解明に向けて研究を行なっており(Tsugita et al., Cell Rep., 2017; Tsugita et al., Part. Fibre Toxicol., 2017; Nakayama, Front. Immunol., 2018)、その研究の一環として、最近CNTを認識する免疫受容体としてT cell immunoglobulin mucin4(Tim4)を同定した(Omori et al., Cell Rep., 2021)。本シンポジウムでは、私たちの最近の研究成果を中心にCNTに対する炎症応答機構について紹介したい。

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© 2022 日本毒性学会
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