日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S39-2
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シンポジウム39
異物応答性核内受容体PXRによるタンパク質間相互作用を介した炎症・免疫調節
*志津 怜太吉成 浩一
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抄録

Pregnane X receptor(PXR)は肝臓や腸管に高発現する異物応答性核内受容体であり、シトクロムP450をはじめとする種々の薬物代謝酵素の転写を介して生態内外の化学物質の代謝・排泄を制御している。PXRはその薬物代謝酵素誘導作用から薬物間相互作用や薬剤耐性化、あるいは化学物質による内分泌代謝亢進等に関わる研究が盛んに行われてきた。近年、PXRの機能喪失と炎症性疾患や肝繊維化、肝細胞喪失時の肝再生との関連、あるいは種々のがんの進行との関連が報告され、PXRの新たな生理機能調節の知見が集積されつつある。これらのPXRの機能は、DNAへの結合を介した標的遺伝子の転写によらず、他の転写因子との相互作用により起こると考えられている。中でもPXRは炎症関連の転写因子であるNF-κBやAP-1との相互作用を介して、それらによる炎症性サイトカインの転写を抑制することが我々や他のグループにより報告されている。これにより、PXRの活性化はリポポリサッカライドや四塩化炭素等による肝障害・肝炎の抑制作用をはじめ、肝非実質細胞からのサイトカインシグナルの抑制を介した肝繊維化抑制、NASHの抑制や肝がんの進行抑制など、様々な生体内イベントを調節することが報告されている。一方で、炎症シグナルによるNF-κBやAP-1の活性化は、PXRの活性化を抑制し、医薬品等による酵素誘導を抑制する。このようにPXRは免疫シグナルとの相互作用を介して、様々な生理機能を調節し、疾患の発症や予防に関与している。本講演では、異物応答性核内受容体PXRによる炎症・免疫調節作用について、我々の研究成果を含め概説する。

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