主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
EU化粧品指令の第7改正により、2003年から動物実験を段階的に廃止するための規制の枠組みが策定されていたが、2013年3月11日以降、EUは化粧品の動物実験を禁止した。この禁止事項は、EU市場にのみ出回るすべての化粧品に適用されるものだが、経済のグローバル化を背景に、化粧品開発に自主的に動物実験を止める国や企業が増えている。
代替法の行政利用に関しては、この9年間、皮膚・眼刺激性、皮膚感作性などの局所毒性試験を中心に動物実験によらない代替法が経済協力開発機構(OECD)で公定化され、2022年現在、ヒト健康に関するOECD試験法ガイドラインのうち、代替法は4割を占めるようになった。また、化粧品や労働安全の安全性において重要な皮膚感作性試験の代替法の整備がOECDで2021年に叶った。一方、2020年、医薬品規制調和国際会議(ICH)S5(R3)生殖毒性試験に代替法が加筆され、医薬品開発への代替法の利用が現実味を帯びてきた。米国環境保護庁(US EPA)も新規アプローチ法(NAM)の開発と行政利用を明言したなどのニュースはあったが、全身毒性試験の代替法の開発は大きな壁になっている。欧州食品安全機関(EFSA)も、欧州化学機関(ECHA)もRead Acrossや構造活性相関(QSAR)しか非動物実験の安全性評価を認めていない。EU-TOXRISKやOECDでは発達神経毒性試験の代替法開発に取り組んできたが、成果は今一つである。
このような状況にしびれを切らすように、2021年9月、欧州議会(MEP)のメンバーは、動物実験を段階的に廃止するEU全体の行動計画を策定するよう欧州委員会に求める決議投票を採択した。安全性評価に関わらず、研究も含めたすべての動物実験を用いないという時代の始まりかもしれない。