主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
TGN1412の臨床試験においてサイトカイン放出症候群(CRS, Cytokine Release Syndrome)による悲劇的な事故が起きたが、MABELアプローチが推奨されるようになったことで、それ以降の臨床試験で抗体医薬品がCRSによる大事故を起こしたとの報告はない。しかしながら、CRSは過去の問題ではなく、今もなお抗体医薬品開発の大きな問題として存在し続けている。CRSのリスクを抱えた抗体医薬品の多くは抗がん剤であるが、MABELアプローチを採用した場合、まったく治療効果が期待できない低用量から慎重に用量をあげていくため、治療効果が得られるまでに長い時間が必要になる。治験に参加する患者にとってみれば、1日も早く治療効果のある用量に到達することが望まれる。なぜ、そうせざるを得ないのか。ヒト細胞を用いたin vitro試験でCRSのポテンシャルの有無については予測できるようになったが、ヒトで起きるCRSの重篤度や用量相関を非臨床で予測することができないので、結局のところ、ヒトに打ってみなければわからないのが現実だからである。もう一つの理由は、CRSの恐れがある医薬品では標準的にプレメディケーションが行われており、またステロイド等による対症療法も行われるが、多くの場合その効果が不十分で、おきてしまった場合の安心感が得られないためである。この状況を改善するため、臨床、非臨床でいまどんな努力がされているのか。本シンポジウムでは、CRSポテンシャルを持つ抗体医薬品開発の最前線でいま行われている、臨床のCRS対応と、企業の非臨床研究を紹介する。