日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: W4-2
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ワークショップ4
タンパク質修飾を介した食の免疫記憶
*内田 浩二
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抄録

毎日のように摂取する「食」は生体恒常性の中心に位置し、生命への影響は絶大である。しかし、食の機能性のうち、健康や疾病に関わる生体調節機能についてはその実態がほとんど明らかになっていない。

一方、演者らの最近の研究により、ある種の食品成分がコバレントケミカルとして速やかにタンパク質と反応し、新たな自然免疫抗原を創出することが発見された。特に、酸化ビタミンC やポリフェノールなどの抗酸化剤に特徴的であり、タンパク質修飾を介して自然免疫分子であるIgM自然抗体や補体C1qとの親和性を賦与することが見出された(Chikazawa et al., JBC, 2013; Furuhashi et al., Biochemistry, 2017; Hatasa et al., PLoS ONE, 2016; Yamaguchi et al., JBC, 2021)。また、興味深いことに、こうした抗酸化剤に起因したIgM抗体の構造・特異性解析の結果、抗酸化剤以外にも、有害なアルデヒド化合物であるアクロレインにより修飾したタンパク質にも強い交差性を示すことが判明した。このようなIgM抗体の多重交差性は、ある種の抗原に対する免疫記憶が、全く因果関係がないような複数の抗原に対しても作用するように獲得された機能であり、自然免疫系において重要な役割を果たしているものと推測される。

こうした自然免疫細胞や自然抗体などの解析を通して、単独・複合食品成分アダクトエクスポソームに対する自然免疫記憶の詳細を明らかにすることにより、食の健康機能解明とともに食習慣を含めた次世代におけるライフスタイル変革につなげることが可能になるものと期待される。

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