主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
減数分裂期相同組換えは、有性生殖を行う生物が配偶子を形成する上で必須の過程である。減数分裂期相同組換えはDNAの二本鎖切断(DNA double-strand break; DSB)によって開始された後、RAD51/DMC1リコンビナーゼの働きによって相同鎖の探索・侵入を経て、相同染色体を鋳型にしたDNAの交換反応によりDSB修復を完了する。RAD51/DMC1リコンビナーゼのDNAへの安定的な結合は、BRCA2などのRAD51 メディエーターと呼ばれる因子によって制御されることが知られており、これまでに多くの知見が得られている。一方で、RAD51のDNAからの解離を促進するアンチリコンビナーゼの役割については、あまりわかっていない。 今回我々は、アンチリコンビナーゼの1つであるFIGNL1がマウスの減数分裂期相同組換え制御に必須であることを見出した。Fignl1のノックアウトマウスが胎生致死であることから、生殖細胞特異的なコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを用いて検証を行った結果、Fignl1 cKOマウスの精巣は萎縮し、減数分裂前期の細胞および精子の減少が見られた。免疫染色による検証の結果、減数分裂前期の精母細胞においてRAD51及びDMC1が染色体上に野生型の2倍以上蓄積していることが明らかになった。RAD51及びDMC1の蓄積は減数分裂前DNA複製期の細胞でも観察され、これらはSPO11による減数分裂DSBに非依存的であった。このことは、FIGNL1によるRAD51/DMC1リコンビナーゼの染色体からの除去が、減数分裂期相同組換えの正常な進行、及び生殖能に必須であることを示唆する。今回新規に明らかになったアンチリコンビナーゼのFIGNL1の生殖細胞における役割について報告したい。