主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
目的
ヒト化された肝臓を有するcDNAuPA/SCIDマウス(PXBマウス®)は、肝細胞の脂質合成を抑制する成長ホルモン(GH)の種特異性により脂肪肝を呈する。本研究では、PXBマウスの脂肪肝を改善させるためにヒトGH(hGH)の適切な投与量を検討し、薬剤性脂肪肝毒性評価への有用性を検討した。
方法
hGHを浸透圧ポンプにより持続投与し、投与量ごとの血中hGH濃度や肝臓中の遺伝子発現量、脂肪肝の改善を比較した。適切なhGH投与量を決定し、脂肪肝を惹起するTO901317(TO)を経口投与し影響を解析した。長期活性持続型hGH製剤の皮下注射により、より低侵襲な脂肪肝の改善も試みた。
結果・考察
0.25mg/kg hGHを2週間投与したPXBマウスにおいて、その血中濃度はヒトを反映し、かつ脂肪肝が改善した。そこで、hGHを0.25mg/kgで持続投与しながら、TOを4日間反復投与したところ、TO投与量依存的に脂肪肝が惹起された。さらに、hGHを4週間持続投与し、TOを1週間反復投与した場合は、より明確に脂肪肝が惹起され、複数の投与期間での本hGH投与系の活用が期待された。一方、長期活性持続型hGH製剤であるソグルーヤまたはエヌジェンラの投与によっても脂肪肝の改善がみられ、より低侵襲な薬剤性脂肪肝の評価検討も可能であると考えられた。
結論
PXBマウスの血中hGH濃度にヒトを反映させた形で脂肪肝を適度に正常化するhGH投与量を決定した。この脂肪肝正常化PXBマウスは、TOのような薬剤によって誘発される脂肪肝毒性評価に有用となることが期待される。hGH非投与のPXBマウスとの比較のため、肝臓中の薬物代謝因子とトランスポーターの発現量解析も検討中である。