主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
Ames試験は医薬品や工業製品に含まれる化学物質のDNAに対する作用(変異原性)を評価する代表的な試験である。試験では、化学物質そのもの、およびラット代謝酵素を用いた化合物の代謝産物両方の変異原性評価を実施している。このような毒性懸念の評価を迅速・安価に進めるために、化合物構造のみから試験結果を予測する in silico(QSAR)の技術開発が盛んになっており、医薬中に含まれる不純物の変異原性評価にQSARの利用がガイドライン化される(ICH-M7)など、利用が進んでいる。手法は大別して化合物の懸念構造に基づいて判定する知識ベースと、機械学習などの計算科学的手法を用いた統計ベースがある。ICH-M7では、Ames試験による変異原性の評価に知識ベースと統計ベースの両方を使用することが求められている。知識ベースの手法では、化学反応知見を基にDNAとの化学反応メカニズムをルール化することで判定を行っている。一方、in silico で入力される化合物構造は酵素による代謝反応前の構造であり、代謝反応によって化合物の構造が変わる場合はDNAとの化学反応の有無を判定することができない。そこで我々は、予測対象の化合物がAmes試験環境中でどのように代謝され、そして試験結果に影響を与えるかをシミュレートする機能を構築し、知識ベース予測の性能を向上させた。さらに公共および社内のAmes試験データを用い、統計ベースである機械学習の一種であるGNNを用いた予測モデルを作成し、上記知識ベースのモデルと組み合わせ、相補的に判定するシステムを構築した。