日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P2-161
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一般演題 ポスター
in vitro神経発達毒性評価に適したヒトiPS細胞由来 3D神経オルガノイドに関する基盤的研究
*本元 恒越松葉 健吾伊藤 智彦速水 耕介曽根 秀子
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抄録

【目的】3次元培養したオルガノイドは、人間の脳や神経の発達、進化、機能、疾患、毒性試験など、幅広いテーマのための研究ツールとして、大きな可能性を秘めている。我々は、これまでにヒト胚性幹(ES)細胞を用いたin vitro神経発達毒性評価テストにおいて、メチル水銀の感受性や鍵となる遺伝子の同定や、サリドマイドのメカニズムなどを明らかにしてきた。そこで、より汎用性の高いiPS細胞を用いてin vitro神経発達毒性試験に適した3D神経オルガノイドの構築を試みた。【方法】RIKEN細胞バンクから分配を受けた日本人女性のヒトiPS細胞株を使用し、フィーダー細胞を用いない平面培養で維持培養した後に、分化培地を用いて、超低接着性96-well丸底プレートで均一したサイズのEB胚葉体を作成した。この基本培養条件において、EB胚葉体形成時にbFGF(4 ng/μL)の存在下、非存在下での生育影響を検討した。その後、Smad阻害剤入りの誘導培地で神経誘導を行い、マトリゲル包囲する条件下で神経上皮を増殖培養した後、小型オービタルジェーカーで50日目まで長期培養した。最終的に、EB胚葉体形成時の培養条件や、その内部構造の形態変化が毒性評価の指標になりうるかを解析した。【結果および考察】 分化初期におけるbFGFの曝露は、神経細胞の発生や増殖にあまり大きな変化は確認されなかった。従来の培養方法の改良により、長期培養を実現した。また、共焦点蛍光顕微鏡観察により、神経オルガノイドは、神経層構造や、散在する神経上皮細胞のクラスターも観察でき、既報と非常に近いオルガノイドの作製に成功した。さらにこの神経オルガノイドを用いて農薬化学物質の曝露影響を検討したので、併せてその結果を紹介し、創薬や食品成分の安全性・毒性評価への適用の可能性について検討した。

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