日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S15-4
会議情報

シンポジウム15: 鳥の鉛中毒:国内で「今」起きている健康被害
鳥類の鉛毒性の特徴と種差
*中山 翔太
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

日本の野生鳥類における鉛中毒は現在も未解決の深刻な環境汚染問題である。2030年度までの鉛中毒の根絶を目標に、2025年度から全国で鉛弾規制を施行する環境省指針が示されたが、本州以南の鉛濃度のモニタリングデータが欠如しており、効果的な規制のため現在の汚染実態と曝露源の調査が不可欠である。また、高感受性の鳥類種を予測し優先的に対策するために、種差が生じる機序の解明も必要である。

これまで我々は鉛汚染・中毒の汚染状況モニタリングや汚染源、汚染ルートの解明に関わる研究を行っている。また、鉛濃度測定に加えて、鉛汚染源推定のための鉛同位体測定や鉛による毒性影響・毒性メカニズム解明に向けた研究も行っている。鉛による血液毒性の鋭敏なバイオマーカーとして知られる標的酵素ALAD(アミノレブリン酸脱水酵素)の阻害率の種差の解析、レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いた臓器における鉛分布解析、鉛暴露によるインダイレクトな毒性影響を解明するための糞便中マイクロバイオーム解析など、様々な観点からの解析も実施している。本講演では、上述した研究成果についてその概要と今後の展望についてご報告したい。

著者関連情報
© 2024 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top