日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-1
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シンポジウム18: 腸管毒性を考える
ADMET研究における小腸機能とそれを模倣するmicrophysiological system(MPS)の開発
*楠原 洋之
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抄録

小腸は十二指腸、空腸および回腸の3つに区分される。小腸は栄養素の吸収部位であり、その効率を高めるために、絨毛と絨毛を構成する上皮細胞の管腔側細胞膜は微絨毛を有している。吸収を促進するための種々のトランスポーターが発現しており、その発現分布が吸収部位を特徴づけている他、コレステロールトランスポーターNPC1L1や胆汁酸トランスポーターASBTは、それぞれ薬効標的分子でもある。一方で、小腸は侵襲を抑制するための生体防御も担い、①ムチン層やタイトジャンクションによるバリア機能、②薬物代謝酵素やトランスポーターが形成する能動的関門機構、③抗菌ペプチド等の分泌、④免疫機能を備えている。分泌組織でもあり、環境に応答し、ペプチドホルモンやセロトニンを放出し、生体応答を促す。微絨毛は陰窩に存在する未分化細胞の維持と、吸収上皮細胞等への分化と先端部への移動、先端部からの脱離といった一連の過程によりターンオーバーしている。未分化細胞からは、吸収上皮細胞のほか、パネート細胞、杯細胞、エンテロクロマフィン細胞等に分化し、上記の機能を維持している。薬物によりこれらの機能が阻害されると、下痢や悪心・嘔吐といった薬剤誘導性消化器毒性の発現に繋がる。近年、臓器環境を模倣した微小環境を構築するためのデバイスの開発も進められ、microphysiological system (MPS)として大きな関心が集まっている。MPSはより臓器・組織環境に近づけたin vitroモデルであり、小腸オルガノイド(エンテロイド)のほか、内皮細胞との共培養や蠕動運動を模倣した伸展刺激等を与えるデバイスの開発も報告されており、薬物動態試験や安全性評価モデルとしての期待が高まっている。本講演では、開発が進むMPSについても紹介する。

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