日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-2
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シンポジウム18: 腸管毒性を考える
消化管毒性発現の種差、部位差、発達/加齢による影響
*今岡 尚子
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抄録

非臨床試験における消化管(胃腸管)毒性は、嘔吐や下痢などの症状発現、体重や摂餌量の変化、及び病理学的検査における肉眼所見や組織学的所見として現れる。特に病理評価に際しては、胃から直腸までの各臓器の機能や組織学的構造、粘膜上皮細胞の回転速度、腸内細菌の動物種差といった違いを考慮に入れて評価を行う必要がある。

医薬品開発の現場では、毒性感受性の種差が特に問題となる。消化管毒性に関しては、同じ化合物に対する便性状の異常有無や病理組織学的な変化の程度に種差があることがよく知られている。特に、げっ歯類よりも非げっ歯類で感受性が高い場合にはヒトに対する安全域の見積もりが大きく変わってしまうため注意が必要である。また、例えば抗菌薬による消化管毒性は腸内細菌叢の減少による吸収不良が主な原因と考えられているが、ヒトと実験動物における腸内細菌叢の構成には種差があり、各種の抗菌薬による腸内細菌叢への影響も種によって異なる。ヒトへの外挿性を論じる際にはこういったさまざまな背景を知っておくことが重要である。一方で、若齢あるいは老齢の動物を用いた毒性試験の知見は少ない。医薬品開発においては、候補化合物が対象とする患者層の年齢によって毒性試験で用いるべき動物の週齢が異なるが、18歳以上の成人を適応とする化合物に対して用いる実験動物の週齢はほぼ一律である。老齢動物と比較した際の化合物に対する感受性や曝露差、変化のプロファイルの差はほとんど検索されていない。

本席では、医薬品候補化合物が消化管に及ぼす毒性変化の特徴に関して、既知の情報及び病理学的な変化の特徴を合わせて紹介する。

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