主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
臨床試験における被験者のリスクマネジメントには、非臨床毒性試験成績が重要な役割を果たしている。毒性試験による副作用の予測性を検証し、予測性を向上させることは、被験者リスクの最小化のために極めて重要である。
臨床・非臨床試験結果の相関性は、2012年の本学会で、日本製薬工業協会基礎研究部会が行った大規模な調査結果が発表されている。この調査から10年以上が経過し、多くの新薬が上市されていることから、我々は近年本邦で承認された医薬品情報を精査し、非臨床毒性試験による副作用の予測性を検証している。具体的には、PMDAが公開している承認情報をもとに、抗がん剤、自己免疫疾患治療薬、糖尿病治療薬、中枢神経系疾患治療薬から複数の新薬(低分子医薬品、バイオ医薬品)を選抜し、承認申請資料、インタビューフォーム、RMP資材などから被験薬に関連した有害事象(副作用)を抽出して、同様の所見が毒性試験で認められているかを調査した。特に今回は、本シンポジウムの主題である腸管における毒性および副作用に焦点をあてて調査解析を行った。
調査の結果、多くの抗がん剤において臨床試験で下痢が認められていること、低分子抗がん剤では下痢の予測性が高いこと、バイオ医薬品では予測できていないものがあること、が確認できた。これら抗がん剤における予測性のばらつきは、医薬品開発の重要な課題と考えられた。今回調査した自己免疫疾患治療薬および糖尿病治療薬(いずれも低分子)の中には、下痢あるいは便秘が認められる医薬品が含まれていたが、低分子抗がん剤と同様に、毒性試験結果からこれらの副作用を予測することができていた。一方で、腹痛や胃部不快感などは予測性に課題があることも明らかになった。
当日は、非臨床毒性試験による消化管副作用の予測性について、低分子かバイオか、投与経路、適応症など多角的な解析結果を提示して、毒性試験の課題を共有したい。