東海公衆衛生雑誌
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伊東市の心筋梗塞発症者における特定健康診査結果の特徴について
田中 克弥田辺 百合香栗木 清典
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2022 年 10 巻 1 号 p. 121-125

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抄録

目的 伊東市における心筋梗塞発症者の特定健康診査結果を分析し, 今後の保健活動を講じるうえでの基礎資料とすることを目的とする。

方法 回顧的コホート研究として, 平成27年度から令和元年度までの5年間に, 新規で心筋梗塞を発症及びその後死亡した者を抽出し, 発症率及び死亡率を算出した。さらに, 特定健康診査の受診の有無による発症及び死亡に及ぼす影響について検討した。また, 症例対照研究として, 心筋梗塞発症者のうち特定健康診査結果のある者を症例群, 非発症者で特定健康診査の結果のある者を対照群とし, 各検査項目について比較した。

結果 回顧的コホート研究より, 追跡期間中に心筋梗塞を発症したのは47人で, そのうち, 存命者は32人, 死亡者は15人であった。追跡期間中における10万人年対の心筋梗塞発症率は40.4, 心筋梗塞死亡率は12.9であった。追跡期間中に特定健康診査の受診歴のあった16人 (すべて存命者) と受診歴のなかった31人には, 特定健康診査の受診による心筋梗塞発症のリスクに有意な差はみられなかった。なお, 死亡者15人のうち, 15人全員に追跡期間中における特定健康診査の受診歴はなかった。

 症例対照研究より, 心筋梗塞発症の症例群のHDLコレステロールは, 非発症の対照群と比較して, 有意でないものの低い傾向にあった。同様に有意差はなかったが, 症例群のHbAlc, eGFR, BMI, 血清クレアチニンの各値は悪い傾向にあった。

結論 特定健康診査の受診の有無は生命予後を左右する可能性や, 心筋梗塞の発症を機に健康意識の向上が図られた可能性を示唆したことから, 特定健康診査の未受診者層や3年以上受診をしていない層といった健康意識の高くない市民へ, 健康意識を向上させ, 健康診査の受診の習慣化を図る必要性が確認できた。心筋梗塞発症者に特徴的な特定健康診査結果に有意差がみられなれなかったことから, 今まで以上に特定健康診査の未受診者に受診勧奨をするとともに, 心筋梗塞の発症を一次予防するポピュレーションアプローチの重要性が確認された。

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