東海公衆衛生雑誌
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セルフ・ネグレクト状態にある独居高齢者に対する早期発見・早期対応のための支援の現状と課題
― 市町村と地域包括支援センターの立場から ―
岡本 名珠子小林 和成纐纈 朋弥
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2022 年 10 巻 1 号 p. 112-120

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抄録

目的 本研究の目的は, 市町村と地域包括支援センター (以下, 地域包括) におけるセルフ・ネグレクト独居高齢者に対する早期発見・早期対応の支援の現状と課題を明らかにすることである。

方法 東海三県の市町村125か所・地域包括379か所 (合計504か所) 所属のセルフ・ネグレクト独居高齢者に関わった職員に, 質問紙調査を実施した。研究期間は2019年11月~2020年1月であり, 調査項目は, 研究対象者の基本属性 (以下, 基本属性) 10項目, 早期発見・早期対応の支援 (以下, 支援項目) 21項目の合計31項目とした。分析方法について, 基本属性は, 各調査項目の基本統計量を算出, 支援項目は, 支援の程度を「1 : 全く行っていない (1点)」-「5 : いつも行っている (5点)」で得点化, 市町村・地域包括別に平均得点±標準偏差, 中央値の差を比較した。中央値の差の検定はMann-WhitneyのU検定を用い, 有意水準は5% (両側) とした。

結果 有効回答 (有効回答率) は, 市町村42か所42名 (33.6%), 地域包括138か所260名(36.4%) であった。支援項目について, 早期発見で平均得点が最も高かったのは, 市町村は「(8)背景を探りながら関わる (3.8±1.2点)」, 地域包括は「(7)身体状態などを推測する (4.2±0.8点)」であった。最も低かったのは「(1)知識を地域住民に啓発する」(市町村1.9±0.9点, 地域包括2.0±0.9点) で市町村・地域包括ともに共通していた。早期対応の支援において, 平均得点が最も高かったのは, 市町村は「(14)拒否されても継続して関わる (3.5±1.2点)」, 地域包括は「(11)予後を予測して支援を行う (3.9±0.9点)」であった。最も低かった支援項目は, 市町村は「(21)引き継ぐ事業者を選定する (2.7±1.3点)」, 地域包括「(18)近隣住民に支援に協力してもらう (2.9±1.0点)」であった。市町村のうち, 「管内地域包括が直営のみ (以下, 直営のみ)」と「管内地域包括が委託あり (以下, 委託あり)」で比較すると, 「(20)担当ケアマネの支援をする (p=0.026)」, 「(21)サービス事業者を選定する (p=0.022)」は, 直営のみが委託ありより有意に得点が高かった。地域包括のうち, 直営型と委託型で比較すると, 「(9)あなたは支援が必要な状態だと伝える」(直営型3.6±1.1点, 委託型3.2±1.0点 p=0.032), 「(14)拒否されても継続して関わる」(直営型4.2±1.0点, 委託型3.8±0.8点 p=0.003) の得点は, 委託型より直営型が有意に高かった。

結論 セルフ・ネグレクト独居高齢者の支援に関して, 地域住民の協力を得ながら情報を把握し, 見守り体制を整える支援は, 市町村, 地域包括ともに課題があった。セルフ・ネグレクト独居高齢者への支援として, 地域包括の「個別」支援に加え, 市町村の分野横断的な「地域」に対する支援の必要性が示唆された。

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