東海公衆衛生雑誌
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地域高齢者の唾液分泌量と口腔機能, 心理的状況ならびに食生活との関連
長谷川 寿美枝徳留 裕子須崎 尚伊藤 勇貴安友 裕子藤木 理代由田 克士
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2022 年 10 巻 1 号 p. 126-135

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抄録

目的 地域高齢者の唾液分泌量と口腔機能, 心理的状況ならびに食生活との関連について検討する。

方法 対象者は2014年7月~2015年9月の間に, 愛知県N市介護予防教室に参加した52名 (65歳以上の男女) である。調査内容は身体測定 (身長, 体重・骨格筋量, 下腿周囲長, 握力), 口腔機能[咬合力, 咀嚼力, 反復唾液嚥下テスト (RSST), 唾液分泌量], 心理的状況[老年期うつ病評価尺度 (GDS-15), 主観的健康感, 高齢者の主観的幸福感(PGCモラールスケール)], 食生活[簡易栄養状態評価(MNA®), シニア向け食欲調査(CNAQ-J), 食物摂取頻度調査(FFQg ver.3.5)]である。唾液分泌量減少群 (0.5mL/min未満) と正常群 (0.5mL/min以上) の2群間比較を行った。連続変量はMann-Whitney U検定, 離散変量2×2表についてはχ2検定を行った。唾液分泌量と各指標との相関はSpearman順位相関係数を用いた。有意水準はp<0.05 (両側) とした。

結果 唾液分泌量のデータがない3名を除いた49名 (男性20名, 女性29名) を解析対象とした。年齢74.0 (72.0-77.0) 歳[中央値 (四分位範囲)], BMI 23.0 (20.3-24.6) kg/m2, 唾液分泌量0.74 (0.46-1.03) mL/minであった。26.5% (13名) に唾液分泌減少がみられた。唾液減少群と正常群の2群間比較では, 咬合力, GDS-15, PGCモラールスケール, CNAQ-J, 菓子類摂取量に有意差がみられ, χ2検定で有意だったのは, 口腔乾燥感, うつならびに食欲の有無, 主観的健康感の良否であった。唾液分泌量と身長, 下腿周囲長, 咬合力, たんぱく質, 亜鉛, 菓子類摂取量の間に有意な相関関係がみられた。

結論 唾液分泌量は, 咬合力, 口腔乾燥感, 心理的状況 (うつ, 主観的健康感, 主観的幸福感), 食生活状況 (食欲, たんぱく質・亜鉛・菓子類摂取量) などとの関連が示唆された。

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