東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
Print ISSN : 2187-736X
高齢者支援に取り組む住民ボランティアの認知症への理解と対応に関する研究
蒔田 寛子鈴木 知代
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 11 巻 2 号 p. 169-178

詳細
抄録

目的 住民ボランティアの認知症高齢者支援の実態と課題を明らかにすることを研究目的とした。

方法 愛知県A市で高齢者支援に取り組む住民ボランティア117名を対象に無記名自己記入式調査を実施した。5の上位項目に38の下位項目を設定し,回答を得た84名を対象に,記述統計を行った。さらに研修受講の有無と38の下位項目別にカイ2乗検定を実施し,有意確率を確認した。

結果 研究参加者は,女性が61名(72.6%),年齢は70歳台が29名(34.5%)と最も多く,研修受講経験“有”が37名(44.0%)であった。【中核症状の理解】で“知っている”が6割を超えた下位項目は5項目,【認知症高齢者への支援】で“行っている”が6割を超えた下位項目は5項目,【認知症高齢者とのコミュニケーション】で“行っている”が6割を超えた下位項目は5項目であったが,【認知症高齢者への支援で困っていること】の下位項目では“はい”が6割を超えた項目はなかった。【認知症高齢者への支援で気づいたこと,実施していること】で“はい”が6割を超えた下位項目は2項目であった。研修受講の有無と38の下位項目別にカイ2乗検定を実施したところ,有意差がみられた下位項目は13であり,【認知症高齢者への支援】【認知症高齢者への支援で困っていること】の下位項目に有意差が集中した。

結論 住民ボランティアは,個人の経験の中で知識や支援方法を修得していると推測されるが,一般的な認知症の症状の理解や高齢者への基本的な支援に留まり,認知症の症状の理解に基づく具体的な支援へのつながりは低く,経験を知識とすることの限界があった。認知症や介護サポートの専門家ではない住民ゆえに自身で経験を知識とする難しさがあり,学習の機会が必要である。行政や専門職の継続的な学習機会提供などの支援が,安定したボランティア活動を可能にすることが示唆された。

著者関連情報
© 2024 東海公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top