東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
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オンライン服薬指導の利用希望に影響を与える要因の検証
尾関 佳代子尾島 俊之
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2025 年 12 巻 2 号 p. 112-118

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抄録

目的 近年,医療のデジタル化が急速に進展し,患者の利便性と医療提供者の効率性向上に寄与するサービスとしてオンライン服薬指導も期待されている。しかし,その受容には未だ多くの課題があり,その理由や背景には様々な要因が関与している。本研究は患者のオンライン服薬指導の利用希望に影響を与える要因を明らかにし,オンライン服薬指導の普及と改善に資することを目的とした。

方法 2023年10月20日~24日,オンラインリサーチ会社の登録者20歳以上の6,000人を対象に,「オンライン服薬指導を受けた経験の有無」及び「処方箋による薬の受取経験の有無」についてスクリーニング調査を実施し,オンライン服薬指導経験者及び非経験者を各250名ずつ抽出し,詳細なアンケート調査を実施した。調査項目には,「利用薬局の数」,「薬局の立地」,「かかりつけ薬局の有無」,「自宅から薬局までの所要時間」,「処方箋を受け取っている医療機関の数」,「オンライン情報収集の有無」,「フォローアップ希望の有無」,「薬剤師への相談経験」,「副作用の既往」,「薬への不安や質問希望」などが含まれた。クロス集計,ロジスティック回帰分析を用いて,各要因とオンライン服薬指導経験との関連性を検討した。

結果 オンライン服薬指導経験者は若年層で男性が多く,かかりつけ薬局を持ち,薬局までの所要時間が30分以上,受診医療機関数が多く,オンラインでの情報収集を頻繁に行っている割合が高かった。さらに,フォローアップを希望し,薬剤師に相談して良かった経験,副作用の既往,薬について不安を感じることがある割合が高かった。ロジスティック回帰分析の結果も同様に,「かかりつけ薬局の利用」,「自宅から薬局までの所要時間の長いこと」,「複数の医療機関の利用」,「オンライン情報収集の頻度高」,「フォローアップ希望有」,「薬剤師への相談での良い経験有」,「副作用の既往有」,「薬への不安や質問希望有」が,オンライン服薬指導の受容に有意な関連を示した。

結論 本研究の結果を踏まえ,オンライン服薬指導の普及を図るためには,デジタルリテラシーの向上とオンライン医療サービスの利便性の周知,特に高齢者やデジタルデバイスに不慣れな患者へのサポート体制の整備が重要であることが浮き彫りとなった。また,患者がオンライン服薬指導のメリットを享受できるように,適切な施策を講じることが求められることも示唆された。

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