東海公衆衛生雑誌
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地域在住高齢者のフレイルと認知機能、および生活習慣との関連
藤原 和美中村 智子
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2017 年 5 巻 1 号 p. 77-83

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抄録

目的 本研究では地域在住高齢者のフレイルと認知機能、および生活習慣との関連について明らかにし、高齢者の健康づくりや予防の示唆を得ることを目的とした。

方法 2011年8月に実施されたA町住民健康診断受診者を対象に、住民健診において運動器検診と認知機能検診を受けた受診者407名中、認知機能、10m歩行時間への参加拒否、および調査票の記入不備を除く291名中、前年との体重比較ができる114名を分析対象とした。フレイルと認知機能および生活習慣との関連性について検討した。フレイルの基準については、CHS(Cardiovascular Health Study)を基に、5つの基準のうち3つ以上に該当するものを「フレイル群」とし、1項目、または2項目該当は「プレフレイル群」、該当なしは「ノンフレイル群」として検証を行った。調査内容は、質問紙にて既往歴、健康意識・自覚症状、疼痛VAS、転倒歴、認知機能低下の自覚、生活習慣について回答を得た。認知機能検査および握力、10m歩行時間の測定を行った。本調査ではフレイルの対象者を認めなかったため「プレフレイル群」「ノンフレイル群」の2群間で前述の調査項目に記載した各変数との単変量解析を実施した。間隔・比率尺度の変数には対応のない検定、順序尺度の変数にはMann-WhitneyのU検定、名義尺度の変数にはχ2検定を用いた。またフレイル該当項目数との関連についてはPearsonの相関係数を用いて分析を行った。

結果 「フレイル」は0名(0%)、「プレフレイル」は61名(53.5%)、「ノンフレイル」は53名(46.5%)であった。年齢は「プレフレイル群」70.8歳(SD = 6.8)、「ノンフレイル群」60.4歳(SD = 6.6)で有意な差を認めなかった。認知機能低下の自覚に関しては、「物をどこにしまったかわからなくなることが増えた」(= 0.001)、「人や物の名前を思い出せないことが増えた」(= 0.026)、「しなければならない約束を忘れてしまうことが増えた」(=0.007)、「新しいことを覚えるのに時間がかかるようになった」(= 0.016)、「標識や信号、注意書きなどに気づかず見落としてしまうことが増えた」(= 0.004)、「物事に取り組むときに、なかなか集中できなくなった」(= 0.002)、「本や新聞を読むのに時間がかかるようになった」(<0.001)、「物事を考えたり判断するのに時間がかかるようになった」(= 0.006)、「簡単に出来た家電などの機械の操作が、難しく感じられるようになった」(= 0.026)の8項目で2群間に有意差を認めた。認知機能検査項目では、情報処理速度および注意機能と実行系機能検査で有意差を認めた(p = 0.009)。また、生活習慣においては、スポーツ・運動の頻度、持続時間において有意な差を認めた。SF-36健康状態調査では「活力」、「社会的生活機能」、「日常役割機能」、「心の健康」の4尺度全てで有意な差を認め、フレイル該当項目数と下位尺度との関連では「活力」で有意な関連が認められた(r = -0.42, p < 0.001)。

結論 本研究では地域住民のフレイルと認知機能および生活習慣との関連について「プレフレイル群」と「ノンフレイル群」で検討した。その結果、「プレフレイル群」で認知機能低下を自覚する症状が多く、認知機能低下とフレイルとの関連が認められた。フレイルの憎悪サイクルを予防するためにも、認知機能低下予防を同時に行っていく必要があることが示唆された。生活習慣では運動習慣のないことがフレイルと関連することが明らかとなった。今後、身体的および精神的なフレイル状態を把握した上で、適した運動内容などを検討し習慣化できる介入方法を検討していく必要性が示唆された。

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