東海公衆衛生雑誌
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調理業務における疲労に関する研究
小濱 絵美加藤 恵子水谷 恵里花加藤 美穂池田 倫子佐藤 生一
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2017 年 5 巻 1 号 p. 84-88

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抄録

目的 近年の労働環境改善に対する関心の高まりにより,労働実態調査が様々な分野で実施されているが,調理業務における調査報告は少ない。そこで,調理業務における疲労の現状把握を目的に調理業務従事者の疲労に関する調査を実施した。

方法 愛知県および近郊の給食施設・委託給食会社に調査を依頼し,同意を得た調理業務従事者(女性92名)のうち,不備回答者を除く女性67名を調査対象とした。調査は平成27年9月~11月に実施した。対象者の基本属性については自記式質問紙調査を用いた。疲労度調査には,日本産業衛生学会産業疲労研究会の「自覚症しらべ」「疲労部位しらべ」を用い,勤務前後の疲労について調査した。勤務前後の比較はWilcoxonの符号順位検定を用いて行った。

結果 調理業務で疲労度の高い作業は食器洗浄であり,疲労度の高い身体部位は腰部であった。調理業務による肉体的な疲労は勤務後に高まり,精神的な疲労(不安定感)の一部は勤務後に軽減した。身体部位別の疲労については首・両肩・腰部において慢性的な疲労がうかがえた。両膝下腿においては勤務前の疲労の訴えは少ないが勤務後に訴えが高まる特徴がみられた。

結論 調理業務における疲労は,肉体的な疲労によるものが大きいと考えられた。身体部位別の疲労については首・両肩・腰において慢性疲労がうかがえ,調理業務における疲労蓄積は,首・両肩・腰部に大きいと推察された。また,両膝下腿についても調理業務における負担の大きい部位であることがうかがえた。調理業務における疲労は,対象者の基本属性や施設設備などの影響も考えられるため,各因子と疲労との関連についてさらに解析する必要がある。

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© 2017 東海公衆衛生学会
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