東海公衆衛生雑誌
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女性被扶養者の特定健康診査受診要因に関する質的研究
堀江 孝太朗平川 仁尚江 啓発北村 亜希青山 温子
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2020 年 8 巻 1 号 p. 71-76

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抄録

目的 特定健康診査(特定健診)は、生活習慣病予防対策として保険者に義務付けられており、受診率を向上させる努力がなされている。しかし、公的医療保険において被扶養者となっている女性配偶者の受診率はなかなか向上していない。本研究の目的は、女性被扶養者の特定健康診査受診要因を明らかにすることである。

方法 2018年2月に全国健康保険協会愛知支部が実施した特定健診受診者のうち、調査への協力が得られた女性被扶養者21名(40歳代10名、50歳代3名、60歳代6名、70-74歳2名)を対象とし、約30分間、受診動機、特定健診に対するイメージや要望等に関する半構造化面接を行った。面接内容を録音して、逐語録を作成し、テキストデータを質的内容分析により分析した。

結果 受診行動に関連する要因として、次の7項目が抽出された。受診しやすい場所: 馴染みのある場所で健診を受けたいと望んでおり、小さい子どものいる者は、子どもの一時預かりサービスがあれば受診しやすいと考えていた。健康不安: 病気にかかっているかもしれないという危機感から、受診を決断していた。健診項目の説明:バリウム服用が身体に負担となる胃部X線検査を、特定健診の必須項目と勘違いして受診をためらっていた者がいた。かかりつけ医がいないこと: 定期的にかかりつけ医を受診しているのでわざわざ健診を受診する必要がないと考える者がいた。健診への信頼:血液検査の結果で異常なしと言われると安心する者がいた。心理的・経済的・時間的コストの低減: 健診申込みや受診は面倒くさいと考える者がいた。非正規雇用のパートタイム労働者として就労している者は、同じ職場の正規雇用労働者と比べて、健診を受けるという理由で休みを申請することをためらっていた。また、受診費用の負担を心配していた者もいた。周りからの働きかけ: 家族、友人、同僚など周囲の人々と健康について話したことがきっかけとなって受診した者がいた。

結論 女性被扶養者が特定健診を受診するのに、育児、非正規雇用労働者の立場、かかりつけ医がいるという安心感、検査への不安と自己負担費用などが、妨げとなっていた。これらを軽減する支援が、育児、就労など女性のライフステージに応じて行われるべきである。

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