2021 年 9 巻 1 号 p. 138-145
目的 本研究の目的は,地域在住の高齢女性の認知的ソーシャルキャピタルに影響する諸要因を検討することである.
方法 A県B町保健センターで行われている健康教室に参加している,60歳以上の活動的な女性を対象に, 無記名自記式の調査を実施した。調査項目は,基本属性,生活習慣,睡眠満足度,健康関連QOL(SF-8の下位尺度8項目)の他,高齢者版スピリチュアリティ健康尺度(下位尺度6項目)を独立変数として加え測定した。従属変数は藤田らの認知的ソーシャルキャピタル5項目の総得点とした。分析はステップワイズ法による重回帰分析を行った。
結果 152人を郵送配布し129人(回収率:84.9%)が回収され,欠損値がない105通(有効回答率:69.1%)を分析対象とした。平均年齢73.1歳であった。笑う頻度,睡眠満足度,スピリチュアリティ下位尺度のよりどころ,SF-8の下位尺度の心の健康スコアはソーシャルキャピタルスコアと正の関連があり,主観的健康感,日常役割機能(精神)は負の関連があった。
結論 ソーシャルキャピタルに関連する要因として,睡眠の満足度,日常で笑う機会,人生の困難を乗り越えてきた心の支えとなる「よりどころ」を強く感じていることが認められた。主観的健康感, 精神的日常役割機能がソーシャルキャピタルと負の関連を示した。