東海公衆衛生雑誌
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新任期保健師の実践能力の構成の検討
-保健師が認識している実践能力の分析から-
小西 真人小西 亜紀奈小林 和成石原 多佳子
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2021 年 9 巻 1 号 p. 146-154

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抄録

目的 新任期保健師が身に付けるべき実践能力の認識の構成を明らかにすることである。

方法 全国の自治体の保健師経験年数5年未満の新任期保健師926名を対象に,無記名自記式質問紙による個別郵送法を実施し,163名から回答を得た。調査項目は基本的属性,及び厚生労働省等が提示するガイドラインを参考に,組織人,個人・家族・小グループ,集団・地域,施策化,健康危機管理,自己管理と自己啓発の6カテゴリー83項目とした。分析は単純集計,及び天井効果・床効果,相関係数・偏相関係数を確認した上で,固有値が1以上のガットマン・カイザー基準,及び研究仮説に基づく6因子に固定した因子分析(主因子法・プロマックス回転)により新任期保健師の実践能力の認識の構成を検討した。

結果 有効回答数162名を分析対象とした。調査対象者の年齢は27.40±3.89歳,性別は「女性」154名(95.6%),職種は「保健部門」が125名(77.2%)と最も多かった。項目分析により83項目から55項目を抽出し因子分析を行った結果,6因子は全て固有値が1以上で妥当な因子構造を確認することができた。6因子は〔地域の組織化,ネットワーク化とその運営する力〕・〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕・〔健康危機管理をする力〕・〔個人・家族への支援と社会資源を活用する力〕・〔行政職,保健師としての基礎力〕・〔活動に研究成果を活用,研究開発する力〕と命名した。因子間相関では〔地域の組織化,ネットワーク化とその運営する力〕と〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕で高い正の相関(r=.705),〔活動に研究成果を活用,研究開発する力〕は〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕を除く全ての因子と弱い正の相関(r=.291~.056)が確認された。Cronbachのα係数は項目全体で.972,各因子で.943~.781と高い値を示し,内的整合性は担保されていた。

考察 新任期に身に付けることができる能力として〔行政職,保健師としての基礎力〕・〔個人・家族への支援と社会資源を活用する力〕がある一方,〔地域の組織化,ネットワーク化とその運営する力〕・〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕は実地による経験が必要である可能性が推察された。また,〔健康危機管理をする力〕・〔活動に研究成果を活用,研究開発する力〕については実地による経験から身に付けることが困難であると推察された。

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