2012 年 14 巻 4 号 p. 002-012
アマルティア・センは,人が所有する財とその特性を用いて人は何をなしえるか,つまり「機能」を考察しなければ,「福祉」を評価することはできないと主張する.地域交通を評価するときも,そのシステムの「機能」と「機会」をセットで考える「潜在能力アプローチ」が必要である.例えば,立派な自動車道路があっても,高齢者,病人,自動車を保有しない人,運転免許を持たない人たちの幸福度あるいは福祉に及ぼすその効果はゼロに近い.本稿では,アマルティァ・センの「潜在能力」アプローチを反映させるように,住民諸活動満足度調査結果に基づき,住民の幸福の視点から地域交通システムを評価する試みを行う.