わが国では観光地と移動空間とをトータルで捉え,魅力的な旅をデザインする議論が乏しい.九州新幹線つばめは,デザイナー水戸岡鋭治により,地域素材や伝統工芸を取り入れた良質な車内空間が提供され,高速移動の価値と旅を楽しむ価値が融合されている.こうした取り組みは,鉄道事業者にとっては潜在需要の発掘やリピート需要の増加,企業のブランド力の強化につながると考えるが,全国的な展開に至っていない.デザインに伴う製造コストの増加が想定される一方,利用需要や収入の増加が予測しにくいことが原因と考える.このため,つばめ利用者の評価を明らかにし,設計,製造関係者へのインタビューからコスト削減策のポイントを探った.