2014 年 16 巻 4 号 p. 023-031
近年,自動車交通の死亡事故が減少傾向にある中,バスやトラックなどの事業用自動車が関与する交通事故が発生し,その背景にある運転者の労働環境や下請構造等の問題が指摘されている.本論はトラック運転者の運行環境に着目し,多重化した取引構造がトラック運転者の安全に影響する過程の解明を試みる.さらに,わが国と制度体系が類似する韓国のトラック産業における現状と制度の比較を踏まえ,多重下請構造注1)の改善策として韓国が導入した直接輸送義務制について考察し,わが国の安全施策を検討する上での示唆を得る.