近年,東京の都心駅周辺で急速に都市開発が進展し,これにより,鉄道駅で激しい混雑が見られるようになった.しかし,上記の駅周辺での都市開発の進展は,駅施設に急激な負荷をかけることとなるが,課題解決に向けた研究は,これまで十分になされてこなかった.そこで本研究では,上記の駅の混雑問題への対応に向けて,課題解決に向けた検討を行う.具体的には,①都心駅で激しい混雑が発生する要因を整理する.②筆者らの研究成果(駅施設の最大捌け人数に関する研究)を踏まえ,駅の激しい混雑を発生させないように,都市開発の規模との整合性の検討を行うとともに,③現行制度(計画・事業制度)の改善方策の提案を行う.
三重県玉城町でオンデマンド交通導入が利用者の交友関係にどのような影響を与えているのかを検証した.手法として,オンデマンド交通ログデータを用いたソーシャルネットワーク抽出手法を提案し,アンケート・インタビューによる分析を併用することでソーシャルネットワークの詳細かつ効率的な分析を行った.その結果,オンデマンド交通によって交友関係が形成されている事例,地域コミュニティが活性化されている事例が確認された.本研究により,オンデマンド交通は単なる移動手段だけではなく地域コミュニティにおける新しい交友関係の創出や深化に寄与できることが明らかになった.
近年,自動車交通の死亡事故が減少傾向にある中,バスやトラックなどの事業用自動車が関与する交通事故が発生し,その背景にある運転者の労働環境や下請構造等の問題が指摘されている.本論はトラック運転者の運行環境に着目し,多重化した取引構造がトラック運転者の安全に影響する過程の解明を試みる.さらに,わが国と制度体系が類似する韓国のトラック産業における現状と制度の比較を踏まえ,多重下請構造注1)の改善策として韓国が導入した直接輸送義務制について考察し,わが国の安全施策を検討する上での示唆を得る.