2023 年 25 巻 p. 6-17
地域公共交通の基幹である乗合バス事業については,特に,地方部生活路線において,多く国や自治体からの公的な補助によって維持されている.近年,この公的補助の中核である国土交通省の補助事業においては,補助対象路線へ定量的な収支改善インセンティブを課す施策が進められている.本論文では,規制緩和後10年間の乗合バス事業者の経営状況のデータから乗合バス事業者の収支改善要因を分析することにより,こうした施策が果たして適切なものであるのかを検討した.結果,事業収支には地域要因が大きく,地方格差を無視した現行政策は事業者の健全な収益向上努力ではなく,単なる生活路線の切り捨てに繋がる可能性が高いことが示唆された.