2024 年 26 巻 p. 39-49
COVID-19の感染拡大による外出自粛に伴い,移動需要が急激に低下している.公共交通が受けた影響の程度を把握するため,経営状況への影響度を多面的に把握する必要がある.本研究では,全国の上場交通事業者が開示する決算資料を分析し,営業収益や営業利益・損失の推移や,借入金や現金及び預金,固定資産等を指標とし,事業者の経営への影響分析を行った.その結果,公共交通事業者は本来の収入とともに利益が戻らず,赤字が続いているものの,借入金による運転資金の確保により,事業停止を避けられていること,現時点ではストックへの影響はまだ顕在化していないが,今後は借入金の返済の負担により影響が生じ得る可能性が示された.