港湾等の社会資本を整備・運営する場合,社会全体として所定の費用対効果を実現させれば,経営体としての財務上の問題は従と考えてよいものと理解されてきた.しかし近年,海上コンテナの取扱いでは香港,釜山などアジアのライバル港に大きく水を空けられ,それに伴って経営体の収益も悪化の一途をたどっている.一方,国,地方自治体の厳しい財政事情から,公的財源の支出に対する国民の見方も厳しくなり,さらにPFIなど直接市場から資金を調達する事業手法が導入されるなど,港湾管理にもより収益性,効率性,さらに透明性が求められるようになっている.本研究では,港湾の経営状況を企業会計的手法を用いて明らかにすることを基本とし,まず日本主要港と海外先進港との比較を行い,財務上の問題点を洗い出すとともに,海外先進港の投資戦略,料金戦略を分析して,港湾の財務体質,競争力の強化に向けた提言を行った.