交通整備事業の費用便益分析においては,交通需要が機関/経路別に推計されていながら,ODレベルでの需要を用いて利用者便益を計算するのが一般的である.また,混雑の緩和についても,利用者便益に含めて計測することも行われている.それに対して,城所(2002)は運輸政策研究機構(1999)による鉄道整備事業の評価マニュアルを例として,それらの計算法が理論的に誤りであるという指摘を行っている.本稿は,城所(2002)で示された見解を踏まえて,実務での便益計測方法について再解釈し,それらの論点が新規整備を含む場合の便益計測や料金形成原理の設定に関係することを示す.それにより,城所論文で誤りであると指摘された運輸政策研機構(1999)の計測方法が妥当性を持つことを主張する.