2003 年 6 巻 1 号 p. 023-038
本研究は,交通プロジェクトの便益計測に関して,3種類のOD間代表一般化費用(最小費用法,加重平均法,ログサム法)を用いた場合の計測便益値の特性を分析するものである.分析は,1ODの場合における数値分析と,東京圏都市鉄道プロジェクトを用いた実証的な分析の2種類によって行った.その結果,各手法による便益値の大小関係は,対象ネットワークの初期条件(一般化費用の大きさや選択肢数)ならびにプロジェクトの特性(新規整備を伴うか伴わないかや改善の程度)に応じて決まることが分かった.また,実際のプロジェクトについて事例分析を行った結果,小田急小田原線の複々線化プロジェクトでは3つの手法間の便益値の差違はかなり小さいが,営団南北線整備プロジェクトでは,ログサム法による便益値が他の手法による便益値よりもかなり卓越すること,そして,この大小関係は,プロジェクトの特性や東京圏の都市鉄道ネットワークの特性等に依存することなどが明らかとなった.