国際航空輸送は二国間主義による制限的なシステムを基本としているが,近年,米国のオープンスカイ協定,欧州やオセアニアにおける航空市場統合,APEC多国間オープンスカイ協定など,地域単位の航空自由化が広がっている.ただし,一口に自由化と言ってもその形態は様々であり,自由化の対象事項やその程度は異なる.そこで本研究では,自由化の動向と形態,及びその背景や意図を,航空企業の競争条件や自由貿易協定との関係を踏まえながら整理した.また,航空協定で規定される項目別に各協定の自由化のレベルを比較し,自由化には,自国(自地域)航空企業の利害を踏まえた戦略が組まれていることを明らかにした.こうした自由化の動向を踏まえ,自由化に後れを取っている我が国の航空協定が今後進むべき方向性を,特にアジア全体の視野を踏まえて展望し,その必要性と可能性について考察した.