2004 年 7 巻 2 号 p. 002-009
各種交通需要推計においては,MNLモデル等のランダム効用をベースとする離散選択行動分析がよく適用される.だが,ここでは,いかなる極小の交通サービスの変化に対しても人間行動が変化するという仮定が置かれており,現実と必ずしも合致しない可能性がある.そこで,本研究では,東京圏の都市鉄道経路選択行動を対象に,交通サービス水準の閾値を計測し,それが需要予測に与える影響について分析を行ってみた.その結果,2つの異なるサービスを無差別と判断して行動する効用差(MPD)は,乗車時間換算で約76秒との結果が得られた.また,現実の改良プロジェクトを対象にモデルを適用し,MPDを考慮する時としない時の需要推計結果の違いについて考察した.その結果,MPDの考慮の有無により,推計される需要は1~2%しか変化せず,実務的な観点からは閾(最小知覚差)を考慮する必要性は低いことが確認された.