2004 年 7 巻 2 号 p. 010-019
本研究は,大都市圏の鉄道運賃を対象に事業者別の運賃制度がもたらす問題を取り上げ,その改善方策を検討するものである.具体的には,鉄道ネットワークが高密化しているエリアにおいて顕著化している,異なる鉄道事業者を乗継ぐ際に運賃が割高となる問題や,同一ODの経路間で運賃格差が生じるため需要が効率的に配分されない問題などを改善するための方策として,事業者毎の運賃体系および運賃水準を同一にする運賃共通化を取り上げ,その特徴や実施上の課題を整理した.そして,東京圏の2つのエリアを対象にシミュレーションを行い利用者および事業者への影響を分析した結果,利用者便益と事業者収入はほぼトレードオフの関係になるものの,所要時間短縮や混雑緩和など費用減少以外の便益も一定額発生することが分かった.以上の結果を踏まえ,実現のためには行政による支援が重要であることを指摘した.