早期落葉または幹焼腐朽を起こしているヤマザクラの葉の生理・形態特性と衰退度の関係性を調査し,これらの障害が生育状況に与える影響について評価した.早期落葉木と幹焼腐朽木は衰退度の評価理由が違っても衰退度に差はなかった.葉面積あたりの葉重(LMA)は障害状況間で差が無く,葉の成熟にともない増加した.SPAD値は,早期落葉と幹焼腐朽ともに季節を通して健全木よりも低い値を示し,衰退度との間にも強い負の相関関係があった.光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm)は,早期落葉木と幹焼腐朽木ともに,葉が未成熟でSPAD値が低い春季にのみ低い値を示した.これらの結果は,早期落葉と幹焼腐朽は葉のクロロフィルへの資源分配が少ないことで,春季に光阻害を受けるが,その影響は葉の成熟にともない軽減されたことを示唆している.一方で,葉の生理・形態特性と衰退度の間に負の相関関係があり,樹高と幹周にも負の相関関係があることから,葉の機能の変化が生育状況にも影響を及ぼしていることが示唆された.