社会学年報
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特集 交流の社会学/定住の社会学
定住者の知と交流の論理
―愛知県矢作川の事例から―
古川 彰
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2007 年 36 巻 p. 7-29

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抄録

 本稿の目的は主に愛知県矢作川流域の所有,管理,利用にかかわる関係主体(アクター)の歴史過程の検討を通して,定住者(コミュニティ)の知と交流の論理について議論することである.とくに本稿では,河川環境保全主体としては注目されてこなかった内水面漁協,河川につよい権利を持つ農業水利団体,河川管理者としての行政,そして環境保全などにつよい関心をもって1980年代から登場する市民グループとの関わりの変化に焦点をあてて記述,分析をおこなった.
 その結果,1990年代以降の河川の環境化によって,諸アクターの活動は流域社会へと開かれ(流域社会化),それぞれのコミュニティに固定化されてきた範域的な関係主体(アクター)が,多様なアクターと関係を取り結ぶことで,アクター間の垣根を低くしてゆるやかに結ばれる関係的なアクターへと変化し,あらたな開かれたコミュニティを形成しつつあるプロセスを明らかにした.

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© 2007 東北社会学会
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