抄録
「看取り」(work with dying persons)の問題は,看取られる側の個の身体への,見取る側のまなざしだけでなく,看取られる側と看取る側との社会的連帯にかかわっている.このような視座から,本論文は,「看取り」について,次の5点を中心に考察する.第一に,M. フーコーの「臨床医学」のパラダイムから出発し,生・病・死のトラジェクトリーをめぐる個の身体のパラダイムについて考察する.第二に,シンボリック相互作用論の立場からA. ストラウスの研究があきらかにしたように,病者のトラジェクトリーと「苦悩」について考察する.さらに,第三に,日本の「看取り」における家族のプレグナンス(重要性)を問題にし,療養上の世話の担い手としての家族の位置づけについて歴史社会学的視座から言及する.第四に,診療の補助と療養上の世話との階層化の問題化としてのアーティキュレーション・ワークについて,フランスと日本において実施した看護師を対象とする比較調査の結果の分析に依拠して考察する.第五に,個の身体のパラダイムにたいする生の贈与のパラダイムが,家族に限定されない社会的ネットワークを基軸とすることに言及したい.