2010 年 39 巻 p. 87-97
医療安全管理者は,看護師,医師,薬剤師といった複数の異なった医療資格者によって担われている.但し,この中でも医師と看護師の占める割合が特に大きい.本稿は医療安全管理者が,日常の業務の中で抱いている問題点の分析という観点から,異なった医療資格者間の中でも,医師と看護師における安全業務に対する問題意識の相異を調査を通して明らかにしている.
結果として,同じ医療安全管理者でありながらも,異なった医師と看護師とでは異なった問題意識を抱いていることが明らかとなった.医師は医療安全業務に対して,その問題の本質は社会や国のレベルにあると捉えているがゆえに,「国レベルの問題」に対して関心を抱く傾向にあり,他方看護師は医療安全業務を身近な組織の問題として捉えているがゆえに,「病院組織内の問題」に対してよりその関心を抱く傾向にある.