2015 年 44 巻 p. 17-24
東日本大震災以降,貧困問題への視点は薄れ,被災問題ばかりがクローズアップされている.しかしながら,被災者が抱える困難の性質は,被災によって一時的に生じた問題だけではない.むしろ,経済的困窮をはじめとする貧困問題としての性質が極めて強く現れている.こうした状況にもかかわらず,「最後のセーフティネット」である生活保護制度は,被災地においても十分に機能しているとは言えない.本稿は,筆者らが行なった仙台市の仮設住宅における生活実態調査をもとに,被災問題と貧困問題との重なりを明らかにしつつ,被災問題に限定されない普遍的な社会保障制度の構築が必要であるとの問題提起をしたものである.