抄録
スズメノカタビラの多様な繁殖様式を解明することを目的に, 強い刈り取りストレスの加わるゴルフ場のパッティンググリーンおよび刈り取りストレスの加わらない果樹園由来のスズメノカタビラを用いて, 穂ばらみ期, 抽出始期, 開花期, 登熟期の4つの異なる生育ステージの花序とその止葉節からの植物体の発生を調べた。その結果, パッティンググリーン由来のスズメノカタビラでは, 個体発生率は開花期 (90%) および登熟期 (100%) の花序で高く, 穂ばらみ期 (2%) および抽出始期 (3%) の未熟な花序からも, 極く低い頻度で個体発生が観察された。果樹園由来のスズメノカタビラにおいても, 個体発生率は開花期 (78%) および登熟期 (77%) の花序で高かったが, 穂ばらみ期および抽出始期の花序からの個体発生は認められなかった。一方, 止葉節からの個体発生は, パッティンググリーン由来のスズメノカタビラの穂ばらみ期と抽出始期の花序で, それぞれ1個体 (根と茎葉) および3個体 (根だけ) が観察され, 果樹園由来のスズメノカタビラでは, 抽出始期の花序で7個体 (根だけ) が観察された。
これらの結果から, パッティンググリーンおよび果樹園由来のスズメノカタビラともに, 1) 種子は早熟性で形成直後に休眠していないこと, 2) 止葉節から非常に低い頻度で根あるいは茎葉が発生すること, 3) パッティンググリーン由来のスズメノカタビラに特異的であるかどうかは不明であるが, 条件的な配偶体型アポミクシス (無胞子生殖による種子生産) である可能性が示唆された。