芝草研究
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研究論文
病害と殺菌剤処理の有無がクリーピングベントグラス2品種の芝生表面に結露した水滴の無機成分に与える影響について
加藤 正広安藤 光一
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 40 巻 2 号 p. 130-136

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抄録
クリーピングベントグラス品種シーワイツーとペンクロスの殺菌剤無処理および殺菌剤処理管理下における病害発生程度および芝生表面に付着した水滴のEC値, 無機成分含量を調査した。その結果, 殺菌剤無処理区では, 殺菌剤処理区よりダラースポット病のパッチ数は多く, ブラウンパッチの発病面積率は高く推移する傾向がみられた。また, ペンクロスにおけるダラースポット病のパッチ数は, シーワイツーよりも多い傾向がみられた。殺菌剤無処理区の芝生表面に結露した水滴のEC値は, 殺菌剤処理区におけるEC値より高く推移する傾向がみられた。また, シーワイツーのEC値は, ペンクロスのEC値より低く推移する傾向がみられた。殺菌剤無処理区の芝生表面に結露した水滴のK, Ca, Mg濃度はいずれも殺菌剤処理区より高く, シーワイツーの芝生表面に結露した水滴のK, Ca, Mg濃度はペンクロスより低かった。これらの分析結果から, クリーピングベントグラスの芝生表面では, 結露した水滴中へ葉からK, Ca, Mgが溶出し, その濃度には品種間差があり, 病害発生による茎葉部の障害に伴い芝生表面に結露した水滴中へ無機物質が溶脱することが示唆された。
以上のことから, 病害や殺菌剤の処理の有無がクリーピングベントグラスの芝生表面に結露した水滴のEC値および無機成分濃度に影響を与え, 水滴のEC値および無機成分濃度は, 病害等によって被った障害の程度を簡易にかつ客観的に評価する指標になると考えられた。
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© 2012 日本芝草学会
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