芝草研究
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秋の生育終期におけるシバの光合成作用及び葉色の変化
福山 正隆佐藤 節郎菅野 勉
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1993 年 21 巻 2 号 p. 178-182

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抄録

本試験では, 草地試験場造成計画研究室で保存している3系統のシバ: 造計No35 (北海道, 大野で採集) , 造計No17 (長野, 菅平で採集) , 造計No1 (鹿児島, 長崎鼻で採集) を用い, これらを, 対照区 (20℃, 夜間15℃) , 低温区 (15℃, 夜間10℃) , 低温・長日区 (2.5時間電照付加, 15℃夜間10℃) の3群に分け育成した。なお, 処理前には, 11月6日, 低温処理1週間の21日, 終了時の29日の3回, 直立茎の先端から第2葉の葉身の光合成を測定した。測定は, 毎回同じ葉を検体として, 30-33℃で行った。また, 葉身の色彩の測定は, 11月6日と29日に色差計を用い, 第2葉の切葉を検体として行った。
(1) 光合成作用は, 対照区での低下が少なく, 低温区, 低温・長日区での低下が大きかった。その結果, 休眠に移行する時期での光合成作用の低下は加齢や日長の影響によるものではなく, 気温の低下に起因することが明らかとなった。また, 低温に起因する光合成作用の低下は, シバの系統間で大きく異なっていて, 低緯度地方から採集した系統の方が, 低温の影響を余り受けないことがわかった。
(2) 低温による葉身の色差 (△E) は, 光合成作用の変化と関連しており, 光合成作用の低下の大きい系統の方の値が大きかった。L*, a*, b*表色系による色差の表示値の中では, a*の変化が大きかった。
以上の結果より, シバは15℃ (夜間10℃) では, 光合成作用の低下が生じることが示され, これは葉色の変化と関連していることがわかった。また, これらは系統間で大きな差異を示し, 低緯度に分布している系統の方が光合成作用の低下が少なく, 色差も余り生じないことが明らかとなった。

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